門前通り
調神社
うなぎ満寿屋
氷川参道入口の鳥居
塩地蔵尊
大宮駅東口入口交差点

いざ参ろう! 中山道宿場町から辿るさいたま市の歴史スポット

さいたま市の歴史を語るうえで欠かせないのが、京浜東北線に沿うようにして市内を縦断する中山道。江戸時代に整備された五街道のひとつで、江戸の日本橋と京都の三条大橋を内陸経由で結ぶルートです。

中山道に69次ある宿(宿場町)のうち、さいたま市内には「浦和宿」「大宮宿」という2つの宿があり、参勤交代や旅人に利用されていました。現在は、浦和宿と大宮宿があった場所は市内でも有数の商業地。宿の姿はなくなっていても、歴史スポットが点在し、街のそこかしこに当時のにぎわいを感じることができます。浦和駅から大宮駅まで中山道を散策しながら、さいたま市の歴史を辿ってみましょう!

エリア

調神社

調神社
調神社
調神社
調神社
調神社
調神社

狛犬ではなく兎がお出迎え?地元憩いの調(つき)神社

 

まずは浦和駅を出発し調神社へ。地元の人々には「つきのみや」という愛称で親しまれています。参道の入口に到着すると、通常神社にあるはずのものが見当たらないことに気づきませんか?そのひとつが鳥居です。かつての倉庫群に作られたため、貢ぎ物の搬出入の邪魔になる鳥居はもともとなかったそう。そして、もうひとつが狛犬です。狛犬の代わりに兎の像が出迎えてくれるのは全国的にも珍しいこと。これは、月待信仰が盛んだった室町時代に、“月”と“調”の読み方が同じことにかけて、月の遣いである兎がモチーフになったからだとか。

調神社

木々に囲まれた境内は緑の香りに包まれ空気が清らか。近隣の住人が日常的に訪れるので参拝客はひっきりなしです。手水舎で身を清めて、拝殿や稲荷社を参拝。御朱印をもらったり、おみくじを引いたりするのも忘れずに!

調神社

境内に兎は何羽いるでしょう?参道入口の兎の像だけでなく、境内には兎のモチーフがいっぱい。ここに、あそこに、こんなところに!目立つものから見つけにくいものまで、兎を探しながら境内を回るのもおすすめです。見つけた兎の居場所はみなさんの心の中に留めておきましょう。

 

調神社

さいたま市浦和区岸町3

ご神前(外)での参拝は24時間可能

祈祷授与時間9時〜16時(随時受付・随時奉仕)

 

浦和宿~門前通り

浦和宿~門前通り
浦和宿~門前通り
浦和宿~門前通り
浦和宿~門前通り
浦和宿~門前通り

人々が行き交う浦和のメインストリート

 

調神社を出て中山道を北上したところで「中山道浦和宿」の石柱を発見!日本橋から京都へ向かう際、中山道の3番目の宿場が浦和宿になります。マンションやビルが建ち並ぶこの場所に、かつて町並み1kmほどの浦和宿がありました。京都に近い方から上町(現在の常盤)、中町(現在の仲町)、下町(現在の高砂)に分かれており、この石柱が建っているのは下町になります。1843年(天保14年)の「宿村大概張」によると、南北に10町42間(約1167m)、家数273軒(その内旅籠15、本陣1、脇本陣3、問屋場、高札場各1)あり、人口1230人ほどが暮らしていたそう。当時の建物などは残っていませんが、中山道を挟んで両サイドに広がる商業地の様子から、宿のにぎわいが想像できます。

メインの通りだけでなく、横道を入ったところにも歴史スポットが点在しているので見逃せません。中でも、古刹・玉蔵院の山門に続く門前通りはぜひ立ち寄りたいスポットのひとつ。通りの入口に建つ石柱から門前までの石畳と、飲食店が多く建ち並ぶ現代的な風景とが相まって、趣のある雰囲気が楽しめます。

酒井甚四郎商店

酒井甚四郎商店
酒井甚四郎商店
酒井甚四郎商店
酒井甚四郎商店
酒井甚四郎商店

明治創業の老舗・酒井甚四郎商店でおみやげ選び

 

浦和宿散策中におみやげを探したい。そんなときは酒井甚四郎商店に立ち寄ってみましょう。明治時代に創業され、各地の物産を取り扱うアンテナショップから始まった同店は、奈良漬を中心に様々な漬物や佃煮を取り扱っています。この奈良漬の味は初代酒井甚四郎から現在の現在の五代目店主まで代々受け継がれたもの。長年の経験と勘を頼りに、その時々の感覚で酒粕のブレンドや漬け込む時間を変えながら1年以上かけて漬け込むそうです。硬めで肉厚な徳島産とジューシーな埼玉産、2種類の瓜を使うことで、食感に違いを出しているのもポイント。店主のモットーは伝統を守りながらも進化を忘れないこと。奈良漬を使ったスイーツや乳製品も新規に開発されていて、お店の人気商品のひとつになっています。ご飯のお供からお酒のつまみ、スイーツまで揃っているので、あれこれ選ぶのが楽しい!佃煮などの味見もできるので、好みの一品を探してみるのも良いかもしれません。

 

 


浦和宿本陣跡

浦和宿本陣跡

かつては大名行列が一休み

 

中山道から少し奥まったところにある仲町公園の敷地内に、浦和宿の本陣跡を示す石碑があります。本陣に当たっていたのは星野権兵衛家。明治時代には明治天皇が休息に立ち寄ったこともある名家でした。当時の建物は残っていませんが、約800坪の敷地に建坪222坪の広い母屋、門構・玄関付きという大規模な屋敷だったそう。石碑横にある案内板には本陣の見取り図や門の写真があるので、屋敷の広さを実感できます。

 

 

本陣跡
さいたま市浦和区仲町2-6(仲町公園)

二・七の市場跡

二・七の市場跡

2と7の付く日は市の開催でにぎわった

 

本陣跡近く、中山道沿いにひょっこりあらわれる野菜売りの銅像。浦和宿が整備される以前より、浦和では毎月2と7の付く日(月に6回)に市が開かれていました。やり取りされていたのは、農産物や穀物、農具、布、日用品など多種多彩。中山道に面した慈恵稲荷神社の社頭に、市神様の石祠と御免毎月市場の定杭が建っています。このような市場跡は全国的にも珍しく、商業史を知るうえでも貴重なものです。

 

二・七の市場跡

さいたま市浦和区常盤1-5-19

うなぎ満寿家

うなぎ満寿家
うなぎ満寿家
うなぎ満寿家
うなぎ満寿家
うなぎ満寿家

「浦和のうなぎ」は中山道の旅のお楽しみ 

 

浦和グルメといえばうなぎ。かつて、浦和近郊には沼地が多くうなぎのほか川魚が多数生息していました。いつの頃からか「浦和のうなぎ」として定着し、伝統の味は多くの老舗に引き継がれています。現在も、浦和のうなぎを広くPRするためのマスコット『浦和うなこちゃん』の活躍や「浦和うなぎまつり」の開催など、浦和のうなぎの存在感は健在。

 

うなぎ満寿家」は明治21年創業、現在五代目女将が切り盛りする人気店。九州産中心の国産うなぎを仕入れ、紀州備長炭で香りよく焼き上げたうなぎは絶品です。稀少うなぎといわれる坂東太郎が入荷することもあるそう。2カ月寝かせ注ぎ足しながら使うタレは、コクがありながらまろやかで、子どもにも食べやすい甘めの味わいになっています。メニューは多彩で、うなぎ料理はもちろん、和の一品料理やコース料理も充実。大小様々な個室に加え、テーブル席やカウンター席も用意されているので、お祝い事の集まりからおひとり様まで気兼ねなく食事が楽しめます。おすすめのメニューはうな重やひつまぶし、ランチ時限定の満寿家セット。蒸す工程が入るうな重に対し、焼きのみのひつまぶしは食感や喉ごしが異なるので、食べ比べてみるのもおすすめです。

 

氷川参道入口の鳥居

氷川参道入口の鳥居
氷川参道入口の鳥居
氷川参道入口の鳥居

中山道と大宮宿は引っ越し組? 

 

中山道を北へ進み、JRさいたま新都心駅を通り過ぎたところで、右手に立派な鳥居が現れます。氷川参道入口に建つ一の鳥居です。鳥居の奥は、武蔵一宮氷川神社まで約2kmの参道が真っ直ぐに延びており、また鳥居のすぐ横には一の鳥居ひろばがあり「武蔵国一宮」の石碑が置かれています。

かつて中山道は氷川参道の東側を通っており、大宮宿もそちらにあったそう。それが、中山道の付け替えによって参道の西側を通過することになり、それにともない大宮宿も移転したということです。

1843年(天保14年)の資料「中山道宿村大概帳」によると、大宮宿の町並みは9町30間(約1.04km)、規模は本陣1軒、脇本陣9軒、問屋場4、旅籠25軒で、人口は1508人。南から吉敷町、下町、仲町、大門町、宮町の5つの町に分けられ、氷川参道入口からさらに北上すると南端の吉敷町に辿り着きます。

 

吉敷町/塩地蔵尊

吉敷町/塩地蔵尊
吉敷町/塩地蔵尊

塩断ちを告げる地蔵の伝説にあやかって

 

中山道の吉敷町交差点、ここにはかつて排水路があり安藤橋という橋が架かっていました。大宮宿に大火が出た際に人々を救ったにもかかわらず、独断を断罪され切腹することとなった…という伝説のある勘定奉行安藤弾正の名にちなんだ橋で、現在はその存在を伝える安藤橋碑が建っています。この安藤橋が、大宮宿の南入口だったそう。現在はマンションや大小のビルが建ち並ぶ落ち着いた街並みになっています。                                           

 

吉敷町での見どころは塩地蔵尊。路地奥にある塩地蔵尊とともに、中山道沿いにモザイクタイルを使った塩地蔵尊の石碑が建っています。塩地蔵尊には、旅の途中病に倒れた父を助けるため、娘たちが地蔵のお告げ通りに塩断ちをすると病が治ったという伝説があります。お礼として塩を多く奉納したことから塩地蔵と呼ばれるように。現在も毎年8月24日には地蔵盆という祭礼が行われています。ぜひ無病息災を祈願して立ち寄ってみましょう。

大門町/大宮駅東口入口交差点

大門町/大宮駅東口入口交差点
大門町/大宮駅東口入口交差点

紀州鷹場本陣跡は大宮のメインストリートに

 

吉敷町から下町、仲町、大門町へと進むにつれ、商業店舗が増えにぎやかになっていきます。大宮駅東口の中央通りと中山道が交差する交差点付近は大宮のメインストリート。大宮タカシマヤや大宮門街などシンボリックな建物があるこの場所は大宮宿の中心地でもありました。紀州徳川家の紀州鷹場本陣は、現在大宮タカシマヤがある一帯にあったそう。さらには明治初期に大宮県の仮庁舎が置かれるなど、歴史的にも重要な役割を担ってきました。

大宮宿の町並みは9町30間(約1.04km)。中山道に沿って町屋造りになっていて、各屋敷の間口が平均7~8間(約12.6~14.4m)であるのに対し、奥行きは約63~65間(約113.4~117m)ありました。間口が狭く奥行きがある町並みは、現在の大宮のメインストリートの景観と似ています。小~中規模の店舗が整然と立ち並ぶ様子に、かつての大宮宿の姿を重ねて見ることができます。

大門町/大宮駅東口入口交差点

紀州鷹場本陣を勤めていたのは北澤家。そして、北澤家の屋敷は日本近代漫画の祖といわれている北澤楽天の生家でもありました。建物などが残っていない代わりに、大宮タカシマヤの屋上には、北澤家が祀っていた北澤稲荷大明神の社が鎮座しています。

大門町/大宮駅東口入口交差点

大宮タカシマヤの対角にあるのが大宮門街。商業施設、オフィス、市民ホールが集まった複合施設は大宮駅東口の新たな顔ともいえるスポットです。大宮宿では脇本陣を勤めた岩井右衛門八の屋敷周辺に当たり、旅籠、商店などが集まっていた場所でした。

大宮ナポリタン

大宮ナポリタン

どこのお店に立ち寄るか迷うのが楽しい!

 

大宮宿散策と一緒に楽しみたいのが大宮のご当地グルメです。

大宮駅周辺を歩いていると目にする鮮やかなオレンジ色。地元のサッカーチーム・大宮アルディージャのチームカラーであり、氷川神社の鳥居の色でもあります。このオレンジ色にちなんで生まれたのが、大宮の新名物・ご当地グルメのナポリタン。古くより鉄道の街として栄えた大宮には喫茶店が多く、ナポリタンが昔懐かしい味として親しまれていたことにヒントを得たそうです。

大宮ナポリタンの条件は埼玉県産の食材を1種類以上使うこと。それ以外は各店に任されており、和風、洋風、中華など味付けが多彩なだけでなく、中にはパスタを使っていないなんてことも!個性あふれる大宮ナポリタンが食べられる飲食店は、大宮駅周辺にいくつもあるので、どこで食べるか迷うのも楽しみです。あちこち食べ歩けば好みの一品が見つかるはず!

大宮宿 本陣・脇本陣密集地域

大宮宿 本陣・脇本陣密集地域
大宮宿 本陣・脇本陣密集地域
大宮宿 本陣・脇本陣密集地域

にぎやかな横道をのぞきながら歩く

 

大門町の隣、大宮宿の北端に当たる宮町は、本陣と脇本陣が密集しているエリアでした。本陣を担っていたのは山﨑喜左衛門家。大宮宿はほかの宿場町と比べて脇本陣の数が多かったようで、宮町だけでも4つの脇本陣があったそうです。宿の有力者たちの屋敷が建ち並んでいた一帯は落ち着いた町並みだったのではないでしょうか。

宿の町屋造りの名残が感じられる中山道沿いには、細い横道がたくさん。一歩足を踏み入れると、ずらりと立ち並んだ商店や飲食店のにぎわいと絶え間ない人々の往来に驚かされます。大宮宿を訪れた旅人も、このにぎわいに心躍らせながら旅したのかもしれない、そんな光景を想像しながら歩いてみましょう。


協力:さいたま市立博物館

参考文献
・浦和市立郷土博物館『特別展 「中山道 浦和宿」』(1999)
・さいたま市立博物館『第44回特別展「中山道 大宮宿」』(2020) 

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